人間のカタチ
ニュージーランドの先住民マオリの人たちに伝わる「世界のはじまり」というお話があります。
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昔々、「空の神様(お父さん)」と「大地の神様(お母さん)」が恋に落ち、抱き合って離れなくなりました。
地上からは光が消え、みんな困り果てました。
そこで、たくさんの神様が集まり、どうしたら空と大地を離すことができるか話し合いました。
一番、年下で知恵のない神様が、魚などをつく銛(もり)で、お父さんとお母さんの手を切ってしまおうと提案します。
それを押しとどめた一番年長で知恵のある「森の神様タネマフタ(カウリの木)」が、大地の上に横たわり、足をあげて突っ張り、空を少しづつ持ち上げ、ついに大地と空を引き離します。
嘆き悲しんだ空の涙が海になり、
大地の涙が川となります。
木が横たわった両側には山ができました。
タネマフタが空まで突き上げた足は元には戻らず、
今もカウリの木は根っこのような枝が空に広がり、上下が逆さまのように見えます。
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長いお話なのでかいつまみましたが、ほかの神様として、「風&嵐の神様」や、
「平和&食べ物の神様」なども登場します。
さて、先のお話の中に出てくる一番年下で乱暴者の神様の名前は
「戦争&△△の神様」だそうですが、△△はなんだかわかりますか?
私はそれを聞いた時、少し悲しい気持ちになりました。
「戦争&ひとの神様」なんだそうです。
確かに、昔から人は戦い続けてきました。
ネアンデルタール人やクロマニヨン人の頃から戦いはありました。
国同士の戦い、会社では出世争い、心の中にも葛藤や戦いはよく起こります。
生まれつき、人は戦わずにはいられない生き物なのでしょうか。
「良い」「悪い」を超えて、マオリの伝説は、私たちに深い問いを投げかけます。
そこで、「本来の人間」とはどういう生き物なのかについて考えてみました。
大いなる自然の一部である「人間という種」の本来の姿は、一体どんなカタチなのでしょう。
「ライオン」は常に本来の「ライオン」のカタチをしています。
「ペンギン」も本来の「ペンギン」のカタチです。
ライオンは草食動物の命を得て生存するというカタチを保ち続けています。草食動物がかわいそうだからと狩をやめることはなく、お腹がいっぱいなのに欲望だけで狩をすることもありません。
ペンギンも、毎日、海に漁に出かけては魚を食べる生活を続けています。いちいち陸に戻ってくるのは面倒だからと海の中に住むことはないですし、
「ペンギン」が「しろくま」になってみたいと真似をしてみることもありません。
(今は「ペンギン」は南半球にしかいないので、北半球にいる「シロクマ」と動物園以外で出会うことはないはずですね。余談ですが、北半球にいた「ペンギン」は人間による大量捕獲で絶滅したそうです。「シロクマ」も人間社会が要因となって引き起こされる急激な気候変動により絶滅が危惧されています。)
もちろん、全てのものは変化しています。
ライオンだってペンギンだって、地球の環境の変化に順応しているでしょう。
ただ、彼らは、自然から与えられた「いのち」に忠実に生きていることだけは確かです。
全ての生き物は、自然の中の食物連鎖の輪を自ら壊すことはなく、
自然のままの姿で、「いのち」に忠実に生きています。
では、人間はどうでしょう?
食物連鎖の外に君臨し、生態系を狂わせ、まさに好き放題、暴れまくってきた人間。
今も、地球の資源を貪り続け、綺麗な水も澄んだ空気も台無しにし、自らの首を絞め続けています。
果たして、自然が自身を破壊するような生き物を自ら生み出したりするでしょうか?
今の人間は、明らかに「本来の人間」から大きくずれています。
昔は「本来の人間」だったというつもりはありません。
だって、昔から人は戦争をしてきたのですから。
過去に「本来の人間」のカタチが見えないなら、
未来にこそ、「本来の人間」になる可能性があるのではないでしょうか。
それには、まず、「本来の人間」像を見つけることが先決です!
地球という星、ひいてはその地球星が浮かぶ宇宙全体の調和に満ちた循環の中にある本来の人間像。
それが、どんなカタチなのかがわかりさえすれば、それを道しるべにして進めばいいだけです。
全ての人が知恵を絞りあって、その道しるべを見つけることができたなら、人は戦わなくてもいい世界に生きることができると思います。
未来に光が射すように、「人間のカタチ」を探す旅を続けていこうと思います。
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先住民マオリのエルダーの物語「WAIPOUA FOREST」のepisode.2のタイトルは「タネマフタ〜森の神様〜」です。
完成をお楽しみに!
2019年が全てのものにとって喜びの多い年になりますように!
1年の終わりに、感謝を込めて。
KISANA LINESスタッフ一同
文:KISANA 写真:森のカメラマン