森と海をつなぐヒーロー
KISANA LINESの新作は
森と海をテーマにした映像エッセイです。
大地と海の景色は似ているなあと、よく思います。
大地に森があるように、海の中にも森があったり、岩場があったり、
砂漠があったり、草原があったり、お花畑があったりします。
そして、ぞれぞれの環境に適した生命がそこに暮らしています。
珊瑚の岩場に隠れるウツボや、砂漠のような海底の砂地に埋もれ隠れるエイ。
アマモ(海中で育つ稲科の植物)の草原では海の牛とも呼ばれる「ジュゴン」が優しく草を食み、風が吹くように波に揺れる海藻の間を、鳥が飛び交うように魚が群れ泳いでいます。
中でも私が好きな景色は、マングローブの森です。
マングローブとは、満ち潮のときは海になり、潮がひくと陸地になる海岸線に生える
樹木の総称です。
私はこのマングローブをとても尊敬しています。
まずは、その生い立ち。
親木からぶらさがった、先の尖った赤ちゃんマングローブの実がぽとんと海水に落ち、
ぷかぷか浮かびながら移動して、好きな場所で、まるでイカリをおろすように実の先端を砂に尽きさします。
そして、陸上の樹木が地面の下で根を広げながら空高く成長していくように、
マングローブの根も水面下で仲間同士が複雑にからみあってお互いの強度を保ちながら
海面の上に枝葉を茂らせます。
この自分の意思(?)で、育つ場所を決める自由な生き方と、
助け合う仲間意識が大好きです(^^)
さらに、その働きがまた素晴らしい。
陸上から海へ流れる水を浄化し、その根で海岸線が崩れるのを防ぎつつ津波など海で起こる災害から陸地を守る、まさにスーパーヒーローであるのみならず、
母なる揺りかごの役目も果たすのです。
小さな生き物は迷路のように入り組んだ根を隠れ家にし、魚たちはそこで卵を生みます。
さらに、陸地から流れる森の養分が根元に溜まり、海の生き物はそれを糧に育ちます。
もちろん、マングローブの実や花は鳥や虫たちなど大地の生き物をも育てます。
こうして海と大地をつなぐマングローブの森。
母なる地球は呼吸を続けていて、
それにともなう気候変動で海岸線の形や位置はこの先も変わっていくでしょう。
そんななか、遠い海に立ち続けるマングローブが、
急激な変化によるダメージを和らげるクッションとなり、私たちを守り続けてくれている
ことをいつも感じていたいと思います。
そして、もし私たち人間が地球の変化を破壊的なほどに早めているとしたら、
なんとか、本来の地球の呼吸のリズムに寄り添って生きていく努力をしたいなと思います。
マングローブに恋する
映像作家