長い眼

 

 

公園の横に住んでいます。

 

朝起きると、まずは、窓を開けて

公園を見渡します。

 

13階に住んでいるので、

木々の天辺を見下ろす感じです。

 

春は、若い葉っぱが

どんどん上に向かって伸びていくのを

毎朝 確認するのが楽しみです。

 

 

 

 

 

今日は 雨模様です。

 

 

 

 

 

空を見上げると、

どんよりとした雲が折り重なって

灰色のグラデーションになっています。

 

 

 

 

 

今日は、光合成ができないね~

と、いつものように木に話しかけました。

 

 

すると、雨水を垂らしながら

うなだれているように見えていた木が

 

まるで違をとなえるように

風でぶるんと揺れました。

 

 

「今日は、お水をもらえる日なのよ」

 

 

というささやき声が聞こえた気がしました。

 

 

 

 

 

「ああ、そうか」と

突然のように腑に落ちました。

 

 

 

「光」か「水」か

どちらかだけなんです。

 

 

 

木にとって「光」と「水」は

どちらも大切な栄養分ですが、

 

 

同時に 両方を

得ることはできないのです。

 

 

それを 当たり前のこととして

静かに立っている木を見ていると

 

 

 

 

 

 

改めて 人間の貪欲さに思い至ります。

 

 

人間の文明は、いつだって両方を

手に入れようとします。

 

 

 

 

 

 

必要なものは、今すぐ 全部

欲しいのです。

 

そのためには

自然をねじ曲げることさえも厭いません。

 

 

他の生き物からしたら

迷惑な厄介者ですよね。

 

 

 

 

 

 

 

気づかれている人も多いと思いますが

 

「欲」というのは

決して満たされることがありません。

 

 

一つの「欲」が満たされた瞬間に

もう何かが足りない気持ちになって、

 

次の「欲」が現れます。

 

 

 

 

 

 

「欲」は お金や物への欲にとどまらず

 

 

「支配欲」「名誉欲」「仕事欲」

「承認欲」「自己顕示欲」「達成欲」

「開発欲」「開拓欲」「創作欲」etc

 

 

現代に生きる人の営みのほとんどは

「欲」につながっています。

 

 

 

 

 

 

そして、人間が、欲望のままに

 

 

働けば働くほど

 

努力すればするほど

 

 

山が削られ、

 

川や海が汚れ、

 

空気が淀んでいきます。

 

 

 

 

 

 

「欲」で動いている限り、

 

人は、一生、

 

満たされることがありません。

 

 

 

 

 

 

この延々と繰り返される

「欲」のループから

 

いったい、どうやったら

人間は出ることができるのでしょうか。

 

 

どうしたら、人は満足できるのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

あるがままを受け入れている木。

 

 

 

木はなんと満ち足りているのだろうと

 

つくづく思いました。

 

 

 

 

 

 

木から学ぶことは  とても多いです。

 

 

 

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ニュージーランドの

先住民マオリのエルダーから 学んだことを

伝える旅をしています。

 

 

 

 

 

代々、木を見守るという役割を持った家に生まれ、

木とともに暮らしてきたグレイスさん。

 

 

 

 

 

 

言葉にならないグレイスさんの想いに

心を重ねるようにして

 

毎回、話しています。

 

 

 

親から子、孫へと、

時代を超えて見続けることが

 

人の役目だという

 

マオリの教え。

 

 

 

 

起こっていることの

 

本質を捉え、

 

判断し、

 

解決策を実行するには、

 

 

 

一世代が見たことでは

短すぎるのです。

 

 

 

「長い眼」をもつこと。

 

 

 

 

 

 

とても、大切なことだと思っています。

 

 

 

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先月はご縁をいただいた徳島で、

 

短編映画「木を見守る人」の

上映+お話し会の6回目を開催しました。

 

 

人前で話すのは まだまだ慣れない中、

多くの人に支えてもらいながら

拙い歩みを続けています。

 

 

集まってくださった皆さまと

手伝ってくれた仲間たちに

 

この場を借りて

心から感謝させていただきます。

 

 

ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に、

大好きなグレイスさんの言葉を。

 

 

 

 

「人は、生まれた時から

 

 そのままで

 ありのままで

 

 他者を助けている」

 

 

 

人は、何かのためにとか、

生産性を上げなくては  とか、

 

日々、強迫観念や恐怖や欲望から

行動しています。

 

あるがまま(自然)に

感謝して

生きることができれば

 

 

人は欲から開放されて

 

 

本当の意味で満たされることが

できるのではないかと

 

 

グレイスさんの言葉が

私の道しるべになっています。

 

 

 

文:KISANA LINES 映像作家

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