あきのいろ
一雨ごとに深まる秋。
幼いころ、樹々の紅葉を見るたびに
神様はなんて素敵な計らいをするのだろうと思っていました。
花は若い時に咲き誇り、歳をとったらしおれて散って行くのに、
木の葉は最後の最後に、こんなにもあでやかに、
華やかさをまとわせてもらえるなんて。。。
ただ、自らの命を焼き尽くすかのように燃え立つ
紅葉のあまりの美しさに、せつなさも感じ、
長い間、秋が苦手でした。
大人になると、秋の味わいが少しづつかわって来ました。
山々を染め上げ、
燃え尽きるかのように葉っぱが散っても、
季節はめぐり、枯れた枝には新しい命が芽吹き、
命に終わりがないことを知ったのです。
哀しみは少しやわらぎました。
そして、さらに歳を重ねて気づいたことがあります。
色づく葉っぱのすべての色は、
宇宙の中でたった一度きりの色。
どの色も
きらめくような「生」を喜び、
「今」を輝く色なのだと。
そこには終わりもはじまりもない。
ただ満ち足りて ここにある。
悲しくなくなりました。
命の「一瞬」に内包される「全てのみなもと」に
やっと目を向けることができるようになったからだと思います。
老いてゆくことは、
自分が豊かになる素晴らしい経験よと 言った
母の言葉が 理解できるようになってきました。
たしかに、日増しに生きている感覚が強くなり、
毎日、たくさんの発見があります。
そして、むかしむかし知っていたことを思い出せるようにもなりました。
新作の「あきのいろ」
秋の夜長に味わっていただければと思います。
次回リリースも間もなくを予定しています。
KISANA LINES映像作家
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