地球へのラブレター

 

 

カナダの北極海に面した小さな島に、旅番組の撮影の下見に行ってきました。

そこには一度、夏に行ったことがあるのですが、

冬の時期にだけここにいる、ある生き物に会いたくてこの時期を心待ちにしていました。

 

 

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島に着きました。

例年なら平均ー15度だというその島は、今年はー2度。かなり暖かいです。

 

ここで生まれ育ったバイオロジスト(生物学者)のセバスチャンが島を案内してくれます。

 

 

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「今年はいい方ですよ」とセバスチャン。

 

「いい」というのは、雪のコンディションで、今年は去年より雪がある方なのだそうです。

 

「去年は全く雪がなくて、大好きなスノーシューをすることもできなかったんですよ」

 

セバスチャンがまだましだという今年ですが、雪に覆われた大地はところどころ茶色い地肌が見えていて、私たちが想像する北極海の島のイメージとはずいぶん違います。

 

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海岸線を走ります。

 

波しぶきが道路に飛び散っています。

 

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セバスチャンは今年40歳。

物心がついてから30年近くは、冬になると島の周りが氷で張りめぐらされ、波が陸地までふりかかるのを目にすることなどなかったそうです。

 

「去年までは、まだ氷の破片ぐらいは浮いていたんですよ」とセバスチャン。

 

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確かに、目の前の海はいくら目をこらしても1辺の氷もなく、

激しい波がようしゃなく海岸線に打ちつけています。

 

 

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実は今回楽しみにしてきたある生き物に会うというツアーは

ここ10年、キャンセルされることが多くなっています。

 

生き物というのは、流氷の上で産まれるハープシール(タテゴトアザラシ)の赤ちゃん。

 

 

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©︎Rei Ohara

 

 

キャンセルになっている理由は、氷の減少です。

 

 

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「海水は2度上がり、平均温度は10度も高いんです。」

 

「島の海岸は毎年2メートルも削られています。」

 

セバスチャンが連れていってくれた展望台。

なるほど、去年までの場所から、ずいぶん内側に移動させられた跡が残っています。

 

夏に来た時、その美しい景観に見とれた赤い砂岩の海岸線。

でも砂岩ゆえにもろく、激しい風が吹く冬には荒波に簡単に削られてしまうのだそうです。

 

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そして、その波をさえぎってくれていたのが、今までは北極から流れ着く流氷で、

毎年、2月末から3月の頭にかけて、その氷の上で赤ちゃんを産み育てるためにアザラシたちはこの湾にやってきていました。

 

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©︎Rei Ohara

 

ですが、今年もアザラシはこの島に来ることはなさそうです。

 

 

楽しみにしていた冬の北極海の島で、

まさかこんな現実と対面するとは思わなくて、悲しい気持ちにとらわれます。

 

ここ10年近く、この湾までたどりつけなくなったアザラシの多くは、もっと北にある陸地の上で赤ちゃんを産んでいるのだとか。

その分、天敵のシロクマに襲われる機会は増えているのでしょうが、

聞けば、深刻なのはシロクマの方だそうです。

 

氷の上に乗って海の生き物をハンティングをするシロクマは、流氷がないと海へ出られず、今、劇的に数が減っているのだそうです。

 

数年前にシロクマの撮影をした際も、雪ではなく草原に寝そべるシロクマが印象的でした。

 

 

仮編 チャーチル

 

漁に出れず飢えたシロクマたちが食料を探して人間が住む町の近くまで来ていたのです。

雪にカモフラージュするための白クマのはずなのに、

これでは、いつか緑クマになってしまうかもしれません。

 

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温暖化が叫ばれてから久しくたちます。

今も、賛成派、反対派の議論が続いています。

もちろん、地球は生きていて、どこかが暖まればどこかを冷やすように、一生懸命バランスをとろうとしています。

 

ただ、野生の生き物にとっては、変化が急すぎるのではないかと思うのです。

少しづつ変化するなら、何世代もかけてその変化に身体も対応していけるでしょう。

でも、近頃の異常な気候変動の早さには、生き物たちはついていけません。

 

人間のように、寒いからと言ってたくさんの燃料を使って暖房を入れたり、逆に

暑いからとクーラーをがんがんにかけて冷やすなんてことを他の生き物はしないからです。

 

きっと温暖化の影響は大地の上だけでなく、海の中の生き物にも及んでいることでしょう。

 

こうして、たくさんの生き物の種が減って行くのを見続けるのは本当に悲しいことです。

 

どうしたら、この変化をもう少し緩やかにすることができるのでしょう。

 

私たちは地球という大きな生命体の一部です。

 

自分の身体を気遣うように、

みんなが地球の声にもう少し耳を傾けながら生きていけば、

きっとどうすればいいのか自ずとわかる気がするのです。

 

 

澄んだ水と綺麗な空気を常に私たちに与え続けてきてくれた地球に、

どうか感謝の気持ちと、思いやりを。

 

 

自分を産んでくれた地球にみんなが両親を思うような優しい気持ちになれたなら、

この変化をくいとめることができるのではないかと信じています。

 

まずは、自分のまわりでやれること、まだまだあると思います。

 

2017年のバレンタインデーに

KISANA LINESは地球に愛を贈りたいと思います。

 

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©︎Rei Ohara

 

撮影:小原 玲

文:KISANA LINES 映像作家

 

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