タイムマシン
紅葉の見頃も終わり。
公園のイチョウの木の下には黄色の絨毯が敷き詰められています。
踏むと、カサッ カサッと乾いた音がします。
上を見上げると 青空をバックに1枚のイチョウが ヒラリと舞い落ちて来ました。
木からの贈り物のように感じて嬉しくなりました。
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先週は京都の鞍馬の山を歩きながら、たくさんの巨木、古木たちに出会いました。
樹齢800年のご神木を眺めながら、この木は、このあたりを駆け巡っていた牛若丸(源義経の幼名)がなくなった頃に芽を吹いたのだなと感慨に耽りました。
800年もの間、誰かに撫でられたり、話しかけられたり、よじ登られたり、その間にいくつもあった戦争だって見て来たのでしょう。木は全部を受け止めて静かにそこに立っています。
木って、まるでタイムマシンのようだなと思います。
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アメリカ人で日本に住む詩人のアーサー・ビナード さんが、ラジオの番組で作家・
三島由紀夫について話していました。
ちょうど、今年の11月25日で亡くなって50年。
三島由紀夫といえば、政治的な側面が取り上げられることが多いですが、
アーサーさんは三島由紀夫の文学者としての才能を高く評価していて、彼ほど日本語を愛していた人はいなかったと言います。
このままだと日本語がなくなってしまうのではないかという危機感を三島由紀夫は常に抱えていて、そのことが彼を政治活動へと向かわせたのではないかと。
アーサーさんはアメリカ人ですが、日本語をすごく愛していて、日本人以上に美しい日本語を話され、詩も日本語で書かれています。
そして、三島由紀夫に想いを重ねるように、「何があっても絶対に日本語をなくしてはだめなんだよ!」と、とても強い語調で話されました。(ピンと来ない人も多いかもしれないですが、アーサーさんは、この先、日本語がなくなってしまう可能性があることを本気で心配されているのだと思います。それは、はるか未来の文化人類学的な話ではなく、政治的世界観に基づく近未来についてです。もちろん、そうならないことを誰よりも願ってのことですが。)
その後にアーサーさんが話された言葉がとても印象的でした。
「僕にとって『言葉』は過去の人と話す『通信機』なんだ。だから、言葉をなくしたら、もう昔の人と通信できなくなってしまうんだ。。。」
最後はとても悲しい口調でした。
これまでにも何度か書きましたが、私も「言葉」は過去の人の思いを乗せた船で、
言葉が詰まった「本」はまさしくタイムマシンだと思っているので、アーサーさんのおっしゃってる痛みが胸の奥底まで響きました。
最近、新刊を出された私が尊敬している絵本作家の阿部海太さんも
「著者の行ったことのない場所へ本は先にたどり着く。
著者が死んだ世界を本は生き続ける。
僕の絵本よ。このまま距離も時間も越えていけ。」
と書かれていて、まさに、、、と思いました。
過去に生きていた人も、今、私たちが少しでもより良い未来になるように願っているのと同じように、たくさんの想いを未来にいる私たちに送ってくれていたのだと思います。
未来を見据え、未来のために尽力し、志半ばで力尽きてしまった人も多くいたはずです。
本を開くと、過去の人が感じていたこと、見ていたもの、その頃の世相など、色々なことが伝わって来ます。
私たちは、今、突然にここにいるわけではありません。
過去の人が植えてくれた樹を切って、家を建て、
過去の人が植えてくれた樹から、柿や栗などの恵みをいただいています。
もし、過去の人が未来のことなど気にせず、
海の魚を全て捕り尽くし、
山や森の木々を伐採して丸裸にし、
虫や動物は皆殺しにして標本にし、
植物や野菜は種を加工して工場で大量生産され、
川や池の水は悪臭が漂い、
マスクをしないと外を歩けないほど空気はウィルスだらけで、
空は灰色なのが常識で、、、
もし、祖先がこんな地球を私たちに残していたと想像してみてください。
私たちは、どんな地球を未来の人たちに残してあげることができるのでしょう。
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KISANA LINESは7世代先、300年先の人にこの愛おしい地球にある全ての自然を見て欲しくて始めた映像図書館です。
それは、それが残っていないだろう未来のために、記録として残しておくというのが趣旨ではありません。
未来の子どもたちに、300年前に生きていた祖先がどれだけ未来に生きる人たちのことを想って、どれだけ本気でこの美しい地球を大切にしていたかを知ってもらえるような物語を残そうと想っているのです。
どうか、未来にもっと眼差しを向けてください。
今の私たちの行動全てが未来に繋がっていることを常に意識してください。
いつか未来の子ども達が、透き通った海を泳ぎながら美しいサンゴ礁にうっとしり、ああ、祖先(私たち)の人たちが大切にしてくれたおかげで、この美しさを味わえているんだな~、僕たちもこれを綺麗なまま未来に残してあげよう、、、
と想ってくれるように。
今夜は満月。
そして、明日から12月。
2020年もあと少しで終わります。
文:KISANA LIENS 映像作家
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