紡ぎ継ぐ地球の物語
夜空を見上げる時、宇宙に地球が浮かんでるところを想像してみてください。
私たちは今、宇宙の中の「地球」という「星」の上に立っているのです。
地球は、その体に多くの生命(いのち)を抱えながら、
鼓動をうつように自身の体を回転させ、宇宙の中でゆっくり動いています。
地球が動くと、そこに、おのずと変化が起こります。
朝や夜があるように、
季節が巡るように、
天気が変わるように。
地球に住む全ての生命(いのち)は、その地球の営みに寄り添うように、
バランスをとりながら生きています。
生まれては、次の世代へ命をつなぎ、
一つの種から、新しい違う種に、命をゆだねながら。
命あるものはすべて、生まれて死ぬまでのストーリーの中を生きています。
雨も風も砂も、地球の全ての物は、みんな、それぞれの物語があって、
お互いに響き合っているのです。
1滴の雨粒が森に降り、川になり、海へ流れ、蒸発して雲になり、また、雨になって降る。
とても、シンプルなストーリーに思えますが、その水蒸気が強風にあおられることもありますし、
山にぶつかることもあるでしょう。寒い日は、雪になったり、凍ったり、
流氷として海に漂うことだってあるでしょう。
毎日、天気は変わり、「雨粒の冒険物語」に終わりはありません。
たとえば、「ライオンのお母さんの物語」。
ある1頭の雌ライオンが、ひときわ美しいたてがみの雄ライオンと恋に落ち、
やがて子どもを生み、その子どもを育てるために、他の生き物と戦い、
相手の命を奪って子どもに与えます。
アフリカのサバンナでは日常的に繰り広げられている普通の営みに思えますが、
実は、46億年の地球の中で、まったく同じライオンは2度と生まれませんし、
戦った相手の動物も、全部、一匹、一頭、一度きりの違う命です。
一見、無機的に思える「1枚のワイシャツ」だってそうです。
繊維になる植物が育ち、それを布にする人がいて、デザインする人や縫製する人がいて、
シャツが出来上がって行く。
そのシャツを売る人がいて、買う人がいて、着る人がいて、
そのシャツに抱かれて繊維の手触りを感じる恋人がいる。
1枚のシャツが、こんなに多くの物語を内包しています。
全ては、偶然に生まれた一回だけの命と命が交わって紡がれる「奇跡の物語」。
あるエスキモーのおばあさんが言いました。
人と人が出会えば、それがたとえ一度の出会いであっても、
お互いがお互いの人生の物語の登場人物の一人になるんだよと。
こう思うと、回りの全てのものを愛おしく感じませんか?
どの命にも限りがあり、
物はこわれ、色はあせます。
永遠のものなど何もない。
ただ、そこに宿った「物語」は永遠に生き続けるのだと思うのです。
生命( いのち) の輪が保たれ、その「物語」が語りつがれさえいれば……
叡智あるネイティブアメリカンは、何を決めるのも、7世代先の子ども達のことを考えるそうです。
自分のおばあさんから数えて自分の孫までが5世代、孫の孫で7世代。
なんとなく、7世代だったら、自分の想像がおよぶ範囲ではないですか?
せめて、一人が、自分の回りにある「物語」を7世代先の子ども達に伝えることができれば、
その7世代先の子どもが、また、次の7世代先の子ども達に伝えてくれることでしょう。
こうして、「物語」というリボンで、過去と未来を結ぶことができたなら、
私たちは未来の命に少しでも輝きを与えることができるのではないでしょうか。
素敵な物語を伝え続けて行くために、もっともっと地球を大切にするようになる気がします。
「地球の全てのものに宿る物語を映像に綴って7世代先の子どもたちへ届ける図書館」は、
そんな思いを込めてはじまります。
世界中を旅して出会ったかけがえのない命の物語を、一つずつ丁寧に映像に綴って、
物語として伝えていこうと思っています。
出来るだけ、多くの人に見てもらい、地球の物語を一緒に語りついでいってもらえたなら、
とても幸せに思います。